ひとり旅 森のバイク
ディエンビエンフーの町が標高400m強だからここは1000mほどの峠。山の細道はバイク専用道である。
町のバイクは子どもを3人も乗せるが、
山のバイクは大きな荷物を運ぶ
二輪が踏みしめた幹線は歩くにはよいが車は通れない。
道の向こうに子どもが見えた。バイクを運転しながら首にかけたポーチからカメラを取り出しシャッターを切ったらブレもせず写っていた。年式の古いキャノンのミラーレスM2から最新のM6に替えたのだがそれなりに性能の向上が実感できる。旅のカメラは軽さが一番。M6に22㎜のパンケーキを嵌めズームは足で、、
スマホが進化し、コンパクトカメラが売れなくなったので、ヤケを起こしたメーカーが一眼で蓄積した技術をミラーレスに放り込んだのではあるまいか。分厚いマニュアルには驚くべき新技術が盛り込まれ、技術者の博覧会を思わせる賑わいだが、とてもじゃないけど素人には手に負えない。便利な機能がありすぎて却って不便だ。ロバート・キャパや沢田教一が白黒で撮った一枚がずんと心に響くことから、機械の性能が良いからといって写真の感動が増すというものでもないのである。
1日700円ほどで借りたホンダ。ベトナムの国民食「フォ」が一杯200円ほどだから700円が高いのか安いのか分からない。排気量は125cc前後、2速にすれば大概の坂道に対応できる。オフロードをがんがん走るにはサスペンションに問題は残るが、前輪はディスクブレーキだから制動に不安はない。レンタル屋は借り手の免許証やヘルメットには関心がないのでとても気楽だ。ただし整備にも興味がなさそうなので要所は自己責任でチェックせねばならない。
BMWやハーレーダビッドソンという趣味のバイクはかろうじて生き残っているが、世界中のカメラとバイクは全部日本製と言っても大きな間違いはない。スポーツ写真はニコンとキャノンが占有し、地球上の道という道にはホンダ、スズキ、ヤマハ、カワサキが溢れている。にもかかわらず原付50ccというひ弱なバイクが車の行く手を塞いでトコトコ走る国は日本だけだろう。F1が300㎞/hでぶっ飛ぶ時代に30㎞/h以上出してはならぬ。右へ曲がるときは二段階右折しなさいという不思議な交通法規が21世紀の今も活きているのだ。ウサインボルトの最高速度は45㎞/hだから彼が国道を走ると逮捕されるかも知れない。ところが三輪車にはヘルメットの着用義務がなく改造ハーレーの三輪に跨がって髪を靡かせるライダーを警察は止められないのである。野暮な国から脱出すると自由な風が頬を打つ。雨さえ降らなければ二輪ほど素晴らしい乗り物はなく、旅の極意は貸しバイクにあると知った。
道端ブティック
アヒルの子そこのけそこのけホンダが通る
191121記