ひとり旅、バイク

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ハノイのバイクはキビナゴの群れに似ていると言っても何のことかわからないでしょう。珊瑚の海で泳いでいると突然あらわれた大きな黒い塊が伸びたり縮んだりしながら止まるかと思えば急に向きを変えて消えます。黒い塊はキビナゴの集まりなのだけれど個体が細胞となってひとつの巨大な生き物を形成しているかのようです。


ハノイの朝は夜明けとともにバイクが立ち上がり群れとなりキビナゴのような集団を形成して道路を埋めます。この国にもお上が決めた交通ルールはありますが本当のルールは各自が作るのです。一応右側通行なのだけれど混んでくるとバイクは左に空白があれば迷わず進みます。

たまに信号機があっても赤だから必ず停まるわけでもありません。そもそも信号機はバイクの自然な流れを阻害する存在だから数が少なく、交差点は渋谷の歩行者天国のごとくホンダとヤマハが入り乱れ行方定めぬ混沌世界が示現します。

それでも微妙なルールはあるらしく道を渡ろうとして渡れない日本人(ぼく)を置き去りにし、土地の人は平気な顔でバイクの川を横切ります。そこには個々のヒトが発する気の流れが存在し、バイクは歩行者の気を読み歩行者は気の空隙を縫って進むのでしょう。日本みたいに頭で考える交通ルールとは違いますね。

幸いぼくは少林寺拳法5級だか4級だかの腕前なので八方目というワザを習いました。目は前方に固定し左右の敵に気を配るという悟空がナメック星で見せたあのワザですね。あれを思い出したので今は交通のゆるい道なら何とか渡れるようになりました。

自我を主張しても所詮ヒトは集団の一部です。宿毛湾のキビナゴのように長い物には巻かれて生きる無我の境地に達したのでしたチョン(これ拍子木よ)


191017

 

 

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