ひとり旅、ハロン湾
旅の締めに世界遺産のハロン湾ツァーに参加しました。負んぶに抱っこの1日旅はとても楽なはずでしたが、
参加者の国籍はインド、フランス、メキシコ、ベトナム、コロンビア、オーストラリア、ニュージーランド、日本はぼく一人、ガイドはアメリカ育ちのベトナム人で共通語は英語→ぼくの旅人英語ではさっぱり聞き取れず小島で洞窟見学したあと置いてけ堀にされて焦りました^^;
ぼく以外はみな仲良し2人連れ、若いカップル、初老のご夫婦といった組み合わせでした。皆さん長旅の途中でこのツァーに参加したのでしょう。旅は気の合った仲間と弥次喜多するのが一番です。が互いの条件がぴったしカンで一致することは滅多にないので自由が欲しければひとり旅しかありません。
しかし旅の感動を誰かと分かち合いたいのも人情で、映画だって2人で観たあとおしゃべりしながら家路につくのは人生の大きな愉しみだろうと思うわけです。
初めての町に来て一人ぼっちでいるのは不安なものでご飯ひとつ食べるにしても土地のルールが全くわからないから慣れるまでは何を選びいくら払えばよいのかさっぱりわかりません。そこにつけ込むぼったくりのワザは芸術の域にあるから気をつけろと本やネットで脅されたもので、だんだん疑心暗鬼になるのでした。
ダイビングは危険回避のため2人で行くのが絶対のルールです。ひとりと2人の違いを海ほど明快に教えてくれる場はないでしょう。寂しい悲しいという孤独の感情はオカのものです。底の見えない磯で仲間の姿を見失った時の恐怖は理屈を超えたものがあります。海も旅も肝試しみたいなところがありますね。
てなことを考えていると同行のインド人女性がそっと寄ってきて Are you alone? と訊くからアローンには孤独とか寂しいという意味もあったかなと受験英語を思い出していると彼女ぼくのカメラで記念写真を撮ってくれました。せっかく女性が声をかけてくれたのに、そこから先に進めないのが語学音痴の悲しいところです。
閑話休題。ハは降りる、ロンは龍、海面に突き出た小島の群れはドラゴンがご降臨賜った有難い島々なのだそうです。1994年世界遺産に登録され旅行者を集めてハロン湾クルーズは大賑わい。船べりから見えるだけで30隻以上の客船がいたから全部で何隻の船が稼動し日にどれだけの数の観光客が運ばれるか想像もつきません。
ぼくらのツァーが行ったのは3つです。海から突き出た山のてっぺんに登る→修行時代の悟空とクリリンが牛乳配達したような(^^ ほぼ垂直上がりの石段で、心臓が弱い者はやめとけという注意書きがありました。
次は別の島で少し石段を登ったところの洞窟に入りましたが、龍河洞も秋芳洞も知っている自分はチラと見てひとりで戻りました。ところがいくら待っても誰も帰って来ないので係員に聞くと帰り道は別にあるのでした。修学旅行でヘマした奴がどうなるかぼくはよく知っているので焦りました。
締めはカヤックまたはバンブーボートを選び、海面ぎりぎりにぽっかり空いた鍾乳洞から内側へ滑り込むと火口湖を思わせる見事な円形の空間が広がっていました。
エコツァーという言葉は知っていましたが実際に参加するのは初めてです。桂林に海水を入れたような見事な風景がある。世界遺産という宣伝文句が置かれた。さて、風景は壊したくないが稼ぎは得たいという連立方程式にベトナムの人は如何なる解を与えたか、
1.高い山に自分の足で登って景色を眺める。2.鍾乳洞へ潜り込む。3.若者は2人でオールを使う。バンブーボート(といってもFRPでしたが)で低い位置から島を見る。よそのチームには高速艇でぶッ飛ばすアトラクションもありました。カーブ切ったとき横にかかるGが気持ちよさそうですね。
といったイベントを高効率にどんどん回転させると汚染は極小に、稼ぎは極大になるうまい仕掛けでした。たぶん山や川あるいは農村体験の類も似たようなパターンだろうと思います。
もしぼくがこの観光ビジネスをデザインせよと言われても、稼ぐべしの1項目があるかぎり落ち着くところはその辺りだろうなと思います。
しかしみんなで持ち寄って全員参加の祭りを作ろうというイベントなら手立ては別にいくらでもあります。ぼくの50代前後の十数年はKoreaの学生を山の町に迎えてどんちゃん騒ぎしたりマジな議論をしたりの夏でした。よそ様の町の人間関係にそっと忍んで企画を持ち込むのは激しいプレッシャーがかかりますが、それでは左様ならと手を振った毎夏の寂寞の中でひとつの節目にはなったのだろうなと思っています。
だいぶ交流事業のノウハウを積んだので退職後は旅行社の知り合いを交えてちょっとしたビジネスも考えていたのですが、震災翌年の大統領が妙なことを言いだしたかと思うと次の大統領いまの大統領と鬱陶しい話ばかり持ち出すので冷めちまいました。(某編集長にからかわれそうなので以下は点描で)
191025